パスタソースの歴史
今では、ニンニク・唐辛子とオリーブ油などを中心に、さまざまなパスタソースが作られて皆で味わっています。
簡単に挙げても
- トマトソース
- クリームソース
- オイルソース
- バジルソール
- ミートソース
- 和風ソース
- チーズソース
その他などなど、多様化が進んでいます。しかし、このように味付けが多種多様になったのは最近のことにすぎません。
パスタソース初期
初めは、肉(去勢雄鶏など)のブロードかアーモンドミルクの中で長時間茹でたものをそのまま食べていたようです。ブロードもしくはアーモンドミルクに小さな細いパスタが入ったスープパスタ(現在一般的なパスタ・アシュッタ)は、ゆっくりと支持者を増やしていき、世紀を跨いで引き継がれていきました。
そして、次にパスタと結びついたのが、チーズです。チーズとパスタの組み合わさる歴史は深く、西暦1000年くらいからすでにあったようです。この時のパスタは必ず大量のチーズをふりかけ、胡椒やその他香辛料をかけて食べていました。そしてチーズで最も洗練されたものが様々なパスタで定番のパルミジャーノチーズです。
産地の都市パルマを由来にしたチーズで、カルディや日本のスーパーでも見つけられます。
大航海時代
そして時代は大航海時代に。
現代の多種多様なパスタにはこの時に新大陸から持ち込まれたものも多くあります。しかしスペイン、ポルトガルなどの列強が中南米や太平洋でさまざまな繁栄を競っていた頃、イタリアは国土をその列強に支配される事態に陥っていました。
なかでもオスマン帝国はエジプトをも手中に収め、地中海、黒海、エーゲ海の制海権を握ります。南イタリアのシチリア島では特に文化の共存、交流、移り変わりが激しく、イスラムの文化遺産も数多く見られます。
また新大陸の発見により、地中海から大西洋へと航海ルートが変更されるとイタリアの海港都市は大打撃を受けました。ヴェネツィアやジェノヴァなどかつて栄華を誇った都市は経済的に落ち、イタリアの貴族は商業から手を引きました。その流れの中で南イタリアのナポリ王國はスペインに取り込まれ、この支配は1861年まで続きます。搾取され現地人が外国人のために犠牲になる構造が続いたのです。現在にまで至るイタリア南北の経済格差はこの時期から始まっていたとも考えられます。
そのような現状の中、スペイン支配唯一とも言えるメリットが、新大陸からの新しい食材がスペイン経由で入ってくることでした。トマトはアンデス山脈西側斜面のペルーやエクアドルが原産地です。イタリアには1554年、ナポリに入港したスペイン帆船によって持ち込まれたと言われています。トマトソースの先駆者は医者のアンドレア・マッティオーリで素晴らしいレシピを開発しましたがなぜかその後百数十年、料理人たちに取り上げられません。
ようやく発展したのは17世紀末。場所はやはりナポリ。ナポリのそれまでの食事のメインは野菜と肉です。一六世紀末の貴族出身の銀行家・知識人で、美術収集家として知られるヴィンチェンツォ・ジュスティニアーニの観察によると、ナポリ人は一般に、葉野菜、ブロッコリ、フルーツを、大量に抑制なく食べることに目がなかったといいます。
貧乏人も金持ちもみな野菜と肉を大量に食べていましたが、それがなぜパスタ食に変容していったのか。それは急増する人口に理由がありました。
トマトが入港した1554年から17世紀末半ばには4倍以上となる人口40万人を突破し、肉不足にはじまる栄養不足が深刻化していきました。そのような状況において、パスタの原料セモリナにはグルテンや植物性タンパク質が豊富に含まれ、チーズをたくさん振りかけ動物性タンパク質と脂肪分を付加すれば完全栄養食にかなり近づきます。
飢餓を救ったパスタが市民権を得ていった瞬間でした。
そして17世紀末、高位聖職者や貴族に仕えた料理人、ナポリのアントニオ・ラティーニの『スペイン風トマトソース』です。完熟したトマトを炭火の上で炙り、丁寧に皮を取り、ナイフで細切れにする。そして刻んだ玉ねぎ、胡椒、イブキジャコウソウあるいはピーマンを混ぜて風味を付け、塩、油、酢で味を整える。輝かしい未来が約束されたレシピであり、大成功を収めました。その後のトマトソースの活躍っぷりは皆さんも知るところでしょう。
トマトソースパスタのレシピ/有元葉子
ナポリで始まったトマトソースはその後も様々な料理人が改良を重ね、発展していきました。
今回は日本人料理研究家の有元葉子さんの『パスタの本』からレシピを参考にして、トマトソースパスタを作りました。
有元さんのトマトソースの準備からになります。
トマトソースの材料
- ホールトマトの缶詰 1缶
- トマトパッサータ(あらごしトマト) 500g 2缶
- にんにく 大一片
- オリーブオイル 大さじ2〜3
トマトソースの作り方
- ホールトマトはバーミックスなどで撹拌し滑らかにする。にんにくは半分に切る
- 鍋ににんにくとオリーブオイル、ホールトマトとトマトパッサータを入れて火にかけ、ときどき混ぜながら煮る
- 鍋底に木べらの跡がつくぐらいまで煮詰めたら火を止めて完成
トマトソースパスタの作り方
トマトソースが出来上がったらあとはもう思うがままにパスタを作ればOK。今回の写真は以下の手順で作りましたよ。
- お湯を2L沸かし、塩20〜30g入れる。
- パスタ茹でる(茹でている間に以下)
- にんにく(一片)をみじん切り
- フライパンにオリーブオイルを入れて(フライパン傾けてにんにくが浸かる程度)弱火でにんにくに火を入れにんにくの風味を抽出する
- にんにくがきつね色になったら有元さんのトマトソースをお好みで
- 茹で上がったパスタを和えで出来上がり
あ、オリーブオイルににんにく入れるときに鷹の爪入れてました。お好みでどうぞ。
最後に
みんなも作ってみてくれ!
参考書籍
▼書いてる通りにしたら本当にすごいパスタができた。
▼好きなことを歴史で紐解くのが好きです。